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広島市/広島

広島ならではの自社商品が名刺代わり
プロダクトデザイナーユニット
HEREDIAKOMIYAMA

広島市/広島

込山 宏美_HEREDIA KOMIYAMA

2024.10.16

生活用品や家電製品、インテリア製品など、あらゆる製品をデザインするプロダクトデザイナー。

そんなプロダクトデザイナーとして、広島市を拠点に活動するのがHEREDIA KOMIYAMAです。スペイン人のポール・エレディアさんと、広島市出身の込山宏美さんからなるユニットで、クライアントワークだけでなく、自社商品の企画開発や流通も手掛けています。

なぜスペインと日本のデザイナーがユニットを組むことになったのか?なぜ自社商品をつくるに至ったのか?今までほとんど語られることのなかったHEREDIA KOMIYAMAのこれまでの歩みや今後の展望について、込山さんにお聞きしました。

取材は込山さんがデザインした、美容室「草樹花」で

留学先で出会い、デザインユニットを結成

HEREDIA KOMIYAMAが結成されたのは2014(平成26)年のこと。それまで込山さんはプロダクトデザイナーとして活動していたわけではなく、注文住宅の意匠設計事務所などで働いていた。

意匠設計事務所でキャリアを積む中「もののデザインもしてみたい」とプロダクトデザインに興味を持つようになった込山さん。一念発起してイタリアのミラノにある学校へ留学、そこで同級生としてスペイン人のエレディアさんと出会った。

エレディアさんは学生時代からプロダクトデザインについて学んできた経歴を持つ。込山さんとは対照的な経歴だが、日本のデザインや製品、ものづくりに興味があったことから二人は意気投合。留学が終了するとHEREDIA KOMIYAMAを結成し、エレディアさんはスペインに、込山さんは広島市に住みながら、オンラインでやり取りする形で日本向けにプロダクトデザインの仕事を始めた。

エレディアさん(左)と込山さん(右)

木の個性を感じられるコンセプチュアルな「木聞器 KiKiKi」

HEREDIA KOMIYAMAではこれまで、クライアントワークだけでなく自社商品の企画開発や流通にも取り組んできた。自社商品をつくろうと思ったのは「自己紹介のためでもある」と込山さんは言う。

HEREDIA KOMIYAMA結成当時、込山さんにはプロダクトデザイナーとしてのキャリアがなかった。またパートナーのエレディアさんはスペイン人。広島市を拠点にクライアントワークをしようにも、そもそも自分たちを知る人がいなかった。そこで自社商品をつくり、商品を通して自分たちを知ってもらおうと考えたのだ。

こうして一つ目の自社商品として誕生したのが「木聞器 KiKiKi」。府中市にある松葉製作所とのコラボ商品で、鉛筆のような形をした3種類の木を削り、それぞれの色や木目、香りなどを楽しむものだ。

使用されている木は、広島県産のスギ、ヒノキ、ヒバ(ヒバは青森県産)。中国地方でもよく見られるごく普通の木だ。「普段何気なく目にしている木も、削るとそれぞれ色や木目、香りが違います。この商品が森に目を向けるきっかけになれば」と込山さん。

発売以降「木聞器 KiKiKi」は、メディアやアワードなどを中心に反響を得ているという。HEREDIA KOMIYAMAの認知を広める一翼を担った。

ひろしまグッドデザイン賞プロダクト部門グランプリを受賞した「木聞器 KiKiKi」

現代ファッションと伝統工芸品が融合した「weather」

デザイン性の高さはもちろん、込められたストーリにも反響が集まった「木聞器 KiKiKi」。しかしコンセプチュアルな商品であるがゆえ、あまり流通はしなかったという。

そこで「もう少し流通するものを」と考えてつくったのが、二つ目の自社ブランド「weather」。広島県の伝統染織り生地である備後絣を使用した、オールシーズン使える多機能ストールとスヌードのブランドだ。

備後絣に着目するきっかけをくれたのは、久留米絣。備後絣、伊予絣と並ぶ日本三代絣の一つだ。

込山さんは元々伝統工芸品が好きで、エレディアさんと一緒に各地の伝統工芸品工房へ足を運び、見学するのが趣味だった。さまざまな伝統工芸品を見てきたが、その中でも特に印象的だったのが久留米絣だという。

「例えば博多の飲食店に行くと、従業員さんが前掛けとしておしゃれに久留米絣を身につけているんですよ。伝統工芸品というと古臭いイメージですが、久留米絣は現代でも普段の生活の中に溶け込んでいる。伝統工芸品のあるべき姿としてハッピーだなと思いました」と込山さん。

その時の印象から、自分たちが拠点とする広島の備後絣を使って、普段のファッションの中に取り入れられるようなアイテムをつくれないかと考えたのだ。

一口にファッションアイテムと言ってもさまざまなものがあるが、ストールとスヌードに決めたのは備後絣の特徴を生かすためだという。古くから着物生地としてつくられた絣は37~38㎝の幅が基本。洋服が主流となっても久留米絣はその伝統を守ることを選んだが、備後絣は洋服生地としても活用できるように1mほどの広幅でも織られるようになった。また大胆な染め模様も魅力であるため、小さく切り刻む必要のない大判のストールとスヌードをつくるのに最適だと考えたのだ。

備後絣の特徴の生かした「weather」

自ら動いてこそ得られるものもある

現在「weather」の商品は備後絣の生産会社から生地を仕入れ、縫製を依頼してつくられている。

かつては日本三大絣の一つと言われ、日常着として日本人の身近にあった備後絣。しかし日本人のファッションやライフスタイルが西洋化するにつれて需要は減っていき、現在では、備後絣の生産会社は福山市と府中市にある2社だけになっている。

HEREDIA KOMIYAMAでは府中市にある1社から生地を仕入れているが、当然最初から知り合いだったわけではなく、込山さんが実際に工房へ足を運んで話をし、なんとか仕入れが叶うこととなった。

また販路についてもゼロだったため、東京の見本市やデパートのポップアップストアへの出店などを通して、少しずつ取扱店を増やしていったという。

販売に至るまでは苦労も多かったはずだが、込山さんは「企画から流通まで手掛けた経験はクライアントワークにも生きています。商品の販売経験があることを知って『総合的に相談できそう』とご依頼いただくこともあるんですよ」と笑顔で話す。

デザイン力や企画力もさることながら、この行動力の高さもHEREDIA KOMIYAMAの大きな武器なのかもしれない。

備後絣がつくられている工場の様子

これまでの経験を糧に、これからも進んでいく

自社商品を名刺代わりに、プロダクトデザイナーユニットとして活躍しているHEREDIA KOMIYAMA。

今後も新たな自社商品をつくるのかと聞くと「まだ具体的にこれというのはありませんが、やっていきたいですね」という言葉が返ってきた。コンセプチュアルな「木聞器 KiKiKi」、流通も視野に入れた「weather」を経て、次は量産できる商品をつくってみたいそうだ。

またいずれは、自社の事務所兼ショールームもつくれればと考えているという。そのショールームでは、きっと「木聞器 KiKiKi」、「weather」に続くいくつかの自社商品と、クライアントワークとして生み出された数多くの商品を見ることができるだろう。

HEREDIA KOMIYAMAのこれからの展開に注目していきたい。

これから生み出されるプロダクトを楽しみにしたい

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