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世羅町/広島

特産品になるきのこを
世羅きのこ園の
未来を見据えた「松きのこ」づくり

世羅町/広島

東山 正_世羅きのこ園

2024.09.04

広島県の中東部に位置する世羅町。観光農園や農作物の販売所が多く、かつては日本有数のマツタケ産地としても知られていました。

今回訪れたのはそんな世羅町にある有限会社 世羅きのこ園。マツタケの人工栽培を取り組む過程で生まれた「松きのこ」や「松なめこ」を生産・販売している会社です。

「松きのこ」の開発者でもある東山正会長に、「松きのこ」の魅力や開発秘話、世羅きのこ園の取り組みについてお聞きしました。

世羅きのこ園の近くでは、世羅町の象徴的な景色が望める

新感覚の美味しさを楽しめる「松きのこ」 

世羅きのこ園が生産する「松きのこ」は、約20年の歳月をかけてつくり出されたシイタケの仲間。

一番の特徴はマツタケとよく似た形と食感。開発者の東山さんでも「マツタケご飯に混ぜたら区別が難しい」そうだ。また火を通さずとも食べられ、しいたけのようにえぐみがないのも魅力。実際に食べた方からは「どんな料理にも使いやすい」「シイタケが苦手な子どもでも食べられた」という声がよく聞かれるという。

マツタケのような見た目だがマツタケではない、シイタケの仲間だがシイタケとは味が違う、「松きのこ」はそんな新感覚のきのこだ。

※シイタケアレルギーのある方は生食をお控えください。「松きのこ」は生食可能ですが、シイタケアレルギーのある方は生食によりシイタケ皮膚炎などを発症する恐れがあります。

世羅きのこ園が栽培する「松きのこ」

世羅町を代表する新たなきのこを

東山さんがきのこ栽培に興味を持ち始めたのは、今から約30年前のこと。当時木材会社に勤務していた東山さんは、木材を加工する中で出るおがくずの活用法を探して中国を巡っていた。その中で偶然きのこを栽培する里に訪れ、栽培方法を目にし、「自社でもきのこを栽培できないか」と興味を持ったという。

帰国後、早速会社の一事業としてきのこ栽培を開始。栽培経験はなかったが、ものづくりが得意であったことから没頭していき、ついには退社して生まれ育った世羅町できのこ栽培に専念することとなる。

「世羅町でやるならマツタケの代わりになるような、町の特産品になるようなきのこをつくりたいと思いました」と東山さんは当時を振り返る。東山さんが幼かったころ、世羅町は全国有数のマツタケ産地だった。しかし酸性雨や地球温暖化などの影響から収穫量は次第に減少、将来的にはさらに収穫が難しくなるのではないかと危惧されるようになっていたという。

こうした将来への危惧もあり、新たなきのこづくりを決意した東山さん。その後約20年という長きにわたって試行錯誤しながら研究を重ね、ついに完成させたのが「松きのこ」だ。

近年「松きのこ」は各種メディアに取り上げられ、ふるさと納税の返礼品としても人気を集めるなど、認知を拡大してきている。世羅町の特産品になる日も遠くないだろう。

自然の秋山が再現されている、きのこが栽培されるハウス棟

品質と環境に配慮、未来に安心・安全を届ける

世羅きのこ園で日々生産されている「松きのこ」。生産は「品質管理」と「環境への配慮」を徹底して行われている。

品質管理については栽培期間中に農薬や化学肥料を一切使用せず、安心・安全に食べられるよう配慮しているという。また、世羅きのこ園ではハウス内の温度と湿度を調整して自然の秋山を再現することで、一年中安定した品質の「松きのこ」を生産できるようにもしているそうだ。

環境への配慮については菌床のリサイクルという形で取り組んでいる。菌床とはきのこを栽培するブロックのこと。きのこを収穫して役目を終えた廃菌床は産業廃棄物になってしまうが、世羅きのこ園では菌床を殺菌してきのこを繰り返し栽培できるようにしたり、堆肥化して再利用したりしているという。

殺菌の方法はおがくずに栄養分と水分を加えて成形した菌床を、120度の蒸気で蒸し焼きにするというもの。蒸し焼きにした菌床は、その後無菌室で管理される。こうすることできのこの生育に必要な栄養分が雑菌により奪われにくくなくなる。同じ菌床からは6回ほど「松きのこ」を収穫できるそうだ。

6回ほど使用した菌床は廃菌床となるが、処分はせず土に蒔いて堆肥化し、近隣の農家さんなどに買い取ってもらっている。また堆肥中で生育したカブトムシを道の駅で販売することも行っている。

廃菌床は業者に依頼してそのまま処分する方が楽なはずだ。しかしそれをしないのは、環境を損なうことのないきのこづくりをしたいから。「未来に安心・安全を届けたいんです」と東山さんは言う。

東山さんが「松きのこ」を生み出したのも、マツタケが収穫できなくなる未来を見据えてのことだった。単にきのこをつくるだけではなく、未来を見据えてきのこをつくるということは、世羅きのこ園が掲げる大きなテーマの一つなのだ。

風味がマツタケに近い「松なめこ」

「松きのこ」のシリーズ化にも挑戦したい

「松きのこ」の認知が広まり、未来を見据えたきのこづくりも形になってきた世羅きのこ園。2022(令和4)年9月には同じ世羅町内に直営のショップ&レストランをオープンし、「松きのこ」のさらなる認知拡大や、規格外きのこの加工品提供によるフードロス削減にも挑戦している。

そんな世羅きのこ園の今後の展望について東山さんに聞くと「『松きのこ』のシリーズ化を考えています。これからも新たなきのこをつくっていきたいです」と、力強い言葉が返ってきた。

すでに世羅きのこ園ではなめこの優良選別を繰り返して生まれた「松なめこ」を生産している。「松きのこ」がマツタケと似た形や食感をしているのに対し、「松なめこ」は風味がマツタケに似ているそうだ。

今後生み出される松きのこシリーズは、どんな見た目、食感、風味で私たちを驚かせてくれるだろうか。シリーズの原点となる「松きのこ」を食べながら、想像を膨らませるのも楽しそうだ。

マンテネーレ・ピノ

〒722-1122 広島県世羅郡世羅町小世良715-4 地図を見る

TEL/ 0847-25-5005
定休日/火曜日(祝日の場合は営業)
営業時間/10:00~17:00(レストランは11:30~15:00)

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