柳井市/山口

「月でひろった卵」を手掛ける
山口の老舗菓子店が目指す
地域に根差した菓子作りへの思い

柳井市/山口

坪野 恒幸_あさひ製菓

2025.04.02

柳井駅から車で7分ほどの場所に本社を置く「あさひ製菓」。創業100年を超える老舗で、山口銘菓として長く愛される「月でひろった卵」「鳩子の海」などのお菓子を製造しています。また、山口県内各所にて「果子乃季(かしのき)」を始めとする和洋菓子店を展開。新商品の開発にも注力しており、常に400種類以上のアイテムを取り扱っているそうです。

本社工場には「果子乃季 総本店」が併設されています。あさひ製菓のお菓子作りに欠かせない、まろやかな口当たりの地下水「琴名水(きんめいすい)」の無料給水所では、ペットボトルやポリタンクを持参して水を汲む人たちの姿を何人も見かけました。敷地内で「あじさい祭」「柳井お菓子まつり(通称:工場祭)」といった大規模なイベントも開催されるといい、地域の人たちが気軽に立ち寄れる場所であることが伺えます。老舗菓子店の三代目にして、あさひ製菓株式会社の代表取締役社長を務める坪野恒幸さんによると、同社の土産菓子は「地元の人に愛される銘菓」である点が特徴とのこと。その言葉の真意を汲むべく、あさひ製菓の歩みやお菓子の魅力、今後の展望について詳しく伺いました。

琴名水を求めて、多くの人が訪れる

始まりは一軒の小さな和菓子店

あさひ製菓の前身となる「チトセ屋」が創業したのは1917(大正6)年のこと。最初に店を構えた柳井市千歳の地名を冠し、最中の皮やせんべい、飴玉などを製造していたという。戦中戦後の混乱期を経て、流通菓子の取次も開始。1951(昭和26)年には商号を「あさひ製菓株式会社」とした。

その後、1974(昭和49)年に発売した「鳩子の海」が大ヒット。一時は下関から岡山に至るまで、すべての駅の売店に並ぶほどの盛り上がりを見せた。これを受けて卸しにまで手が回らなくなり、製造に専念することに。翌年には初の直営店となる「鳩子庵」をオープンし、土産菓子の製造販売を中核事業に据えるなど、現在まで続く会社の礎はこの時期に築かれた。

果子乃季 総本店の前で語る、代表の坪野さん

会社の基盤を固めた「鳩子の海」

あさひ製菓最初のヒット商品となった「鳩子の海」。柳井・上関を舞台とする朝のテレビ小説にちなんだお菓子で、生の生地をアルミホイルで包んで焼き上げた。ホイル焼きの製法が用いられたのは日本初。現在はあさひ製菓の会長を務める坪野さんの父・功さんが「お土産に適した日持ちする商品を作りたい」と考え、専用製造機械の開発から手掛けたという。

鳩子の海は今なお同社の人気商品だ。時を経て製法などは変更されたが、どこか懐かしい心和む味わいは受け継がれている。自家炊きミルク餡をしっとりとした皮で包んだお饅頭は贈り物にも最適。坪野さんをして「鳩子の海がなければ今のあさひ製菓はありません」と言わしめる銘菓をぜひ味わってほしい。

現在販売されている「鳩子の海」

たちまち話題を呼んだ「月でひろった卵」

1987(昭和62)年には果子乃季の一号店がオープン。同時に、あさひ製菓の代名詞ともいえる人気商品「月でひろった卵」の一般販売がスタートした。もともと「山口銘菓・ういろうの生産ラインを遊ばせることなく活用したい」との思いから開発に着手したという同商品。結局は専用製造機械も必要になったが、航空機内限定で振舞われる機内用茶菓子に採用されるや否や大いに話題を呼び、ほどなくして果子乃季の店頭に並んだ。

今や月でひろった卵はあさひ製菓の代名詞ともいえる存在。印象的なネーミングはアンケートを実施の上、キャビンアテンダントたちの意向を反映したものという。ふんわりと蒸しあげたカステラ生地で口溶けなめらかなカスタードクリームを包み、刻み栗を加えた逸品。当時、そのふわふわ感と柔らかさは他になかった。やがて、時流に応じて味や素材に改良が加えられたが、基本的には初期の姿をそのまま留めている。

現在、月でひろった卵には多くの種類がある。季節限定味も登場しており、見逃せない。気品ある深い香りが特徴のフランス産ボージュコニャックを使い、イタリア栗のマロングラッセを混ぜ合わせた「月でひろった卵 プレミアム」もラインナップ。一度に色々な味わいを楽しみたい方には「おためしセット」がおすすめだ。まずは、オンラインショップで気になる味をチェックしてみてはいかがだろうか。

ふるさとの味として愛されてこそ

山口の定番土産として認知されるに至った、あさひ製菓のお菓子。県外から訪れる観光客のみならず、地元の人たちが買い求めるケースも多いという。普段の手土産として、少し贅沢なおやつとして。名物に旨い物なしという言葉もあるが「地元の方に美味しく食べていただけている点が弊社の強みです」と坪野さんは語る。

あさひ製菓は柳井の和菓子店として創業して以来、地元・山口県に根差しながら歩んできた。「地域の方に愛されなければ、お土産にならない」という考えのもと、山口県産の原料を積極的に取り入れながら、県内での出店に注力。地域の雇用創出に寄与したいとの思いも強い。

近年は「ふるさとの味」を心に留め置いてほしいと、山口県内で開催されるすべての成人式を対象に、月でひろった卵を新成人へ贈呈。また、販売が開始された7月14日を「月でひろった卵の日」に制定し、柳井市の小学生全員にプレゼントするなど、常に地域社会へ目を向けている。

現状、山口県外に店舗がないのは寂しい気もするが「山口といえば果子乃季がある、月でひろった卵が有名よねって、そう言ってもらえるようになりたいんです。あさひ製菓のお菓子が気になったら、ぜひ山口県へ遊びに来てください」と笑顔を見せる坪野さん。「山口の人に愛され、山口で育てられた企業」であることを念頭に、ここでしか味わえないお菓子を作り続ける。

柳井の夏の風物詩「金魚ちょうちん」で飾られた、果子乃季 総本店

すべての人に美味しいお菓子を届ける

あさひ製菓が現在の場所へ移転してきたのは1992(平成4)年のこと。良質な地下水が豊富に湧き出ることを条件に、本社工場を構えた。新工場は焼菓子や和菓子だけでなく、ケーキやカレーの工房も完備。大きな機械を使ったライン工程や職人たちによる手作業の様子は見学可能だ。驚くべきは商品ラインナップとバリエーションの豊富さ。試食会がほぼ毎日実施されており、坪野さんもすべての試作品を口にするという。次々に登場する創意工夫を凝らしたお菓子の数々。イベントに合わせて売り出される季節のスイーツも多い。あさひ製菓は企画・製造・販売それぞれの部門が絶えず新しいテーマを打ち出す「企画集団」ともいえるだろう。

今後の展望について坪野さんに伺うと「これからも新しい商品は作っていきたいです。今まで同様、地域の方に喜んでもらえるような提案を続けたいですね」との言葉が返ってきた。加えて、すべての人たちに美味しいお菓子を食べてもらうため「アレルギー対応スイーツ」の部門も強化したいとのこと。既に「アレルギー対応スイーツ専門店(non)-ノン-」というオンラインショップを開設しているため、併せてチェックしたい。長く愛される銘菓を受け継ぎながら、既成の枠にとらわれないアイデアを形にする同社。今後も人々の笑顔を創出し続けるだろう。

果子乃季 総本店

〒742-0021 山口県柳井市柳井5275 地図を見る

TEL/0820-22-0757
営業時間/9:00~18:00
定休日/元日

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