広島伝統の味を受け継いだ
唯一無二の旨味「せんじ肉」を軸に
さらに愛される珍味を届ける
広島伝統の味を受け継いだ
唯一無二の旨味「せんじ肉」を軸に
さらに愛される珍味を届ける
西区/広島
2025.04.16
広島のソウルフード、せんじがら。豚の胃袋などを「煎じ」た「殻」をカリカリに揚げ、塩などで味付けしたもので、昭和初期には広島の家庭で子どものおやつとして親しまれていたと言われています。そんなせんじがらを「せんじ肉」として商品化したのが、広島市西区に本社を構える珍味メーカーの大黒屋食品株式会社です。
大黒屋食品の「せんじ肉」は、広島をはじめとする中国地方のスーパーやコンビニエンスストアを中心に販売され、お酒のおつまみとして多くの人に愛されています。大黒屋食品株式会社の片岡真一代表取締役社長に、同社の歩みや展望、そして「せんじ肉」の魅力についてお話を伺いました。
思いを語る、代表取締役社長の片岡さん
大黒屋食品が創業したのは1949(昭和24)年。広島市中区流川で居酒屋を営んでいた目黒恒一さんが、珍味の販売に乗り出したことが始まりだった。その後、息子の俊治さんが新たな事業としてコンビニエンスストア「ポプラ」を立ち上げると、これが大ヒット。ポプラの拡大に伴い、大黒屋食品はその傘下に入った。しかし、珍味に特化した事業を展開していたことから、同業他社との協業を模索するようになり、2021(令和3)年から尾道市に本社を構える珍味メーカー「まるか食品株式会社」の子会社となっている。
大黒屋食品では現在、海産珍味やフライなど、さまざまなお酒のおつまみを販売している。その中でも代表的な商品が「せんじ肉」のシリーズだ。広島で昭和初期から愛されてきたソウルフードの「せんじがら」を商品化したもので、国産の豚ホルモンや鶏砂肝をじっくり煎じ揚げて水分を飛ばし、味付けして仕上げている。
「せんじ肉」を開発した当時は、「せんじがらにお金を出す人はいない」と周囲から反対される中、「とにかくやってみよう」と決意し、協力会社と共に商品化。当時の親会社であったポプラで販売したところ、意外にも好評を博した。そこで、ポプラでの売り上げ実績を持参し、広島のスーパーにも置いてもらえるよう交渉。20年以上の年月をかけて取引先を次第に拡大し、現在では中国地方を中心に関東などでも販売されるようになった。
大黒屋食品の代表商品「せんじ肉」の現在のラインナップ
「せんじ肉」の特徴は、何と言ってもその強い旨味。最初の歯応えは硬いが、噛んでいくうちに柔らかくなり、口いっぱいにじゅわ~っと旨味が広がる。この旨味に魅了され、リピート買いする人も多い。
せんじがらは他社でも商品化されているが、「特にうちの『せんじ肉』は美味しいと言われます。小売店のバイヤーさんから高く評価され、売り上げも好調です」と片岡社長。美味しさの秘訣は製造方法にある。具体的な工程については企業秘密だが、原料となる豚ホルモンや鶏砂肝の状態に合わせて、塩分を配合する量や味を染み込ませる時間などを調整することがポイントだ。
美味しさにこだわる理由は、珍味という商品の特性にもある。片岡社長によれば、「珍味の場合、値段ではなく味と食感が重要で、お客様はそれに惹かれる」という。例えば、ポテトチップスの価格が高い時、安価なコーンスナックに手を伸ばす人もいるだろう。しかし、珍味の場合はそのような代替が効きにくい。「せんじ肉」を食べたい人は、特有の旨味や食感を求めており、他の製品では満足感が得にくいからだ。
こうしたお客様の期待を裏切らないように、常に美味しさを維持することが珍味メーカーには求められる。「お客様が『やっぱりこの味だよね』と満足される姿を想像しながら、日々原料と向き合い、丁寧に製造しています」と片岡社長。美味しさを維持し、お客様から愛され続けていることを誇りに思っているそうだ。
珍味メーカーとして数多くの商品を取り扱っている
大黒屋食品では、新商品開発にも力を入れている。現在目指しているのは、「せんじ肉」に続く唯一無二の珍味の開発だ。片岡社長は「新商品は、往々にして『気付き』から生まれるもの」と考えている。「せんじ肉」が、「家庭で親しまれてきた伝統的な食品を商品化してみてはどうか?」という気付きから誕生したように、ちょっとした気付きがヒット商品につながることは多い。そのため、大黒屋食品では毎週、製造や営業などさまざまな部署の社員が集まり、気付きを共有。社員一丸となって、新商品開発に取り組んでいる。
また、今後は新たな原料を使用した珍味の開発も視野に入れている。現在の主な原料は、イカなどの海産物や豚ホルモンなどの畜肉だが、今後は豆類も積極的に取り入れ、珍味全体を提供できる会社を目指すという。珍味業界は、会社同士の結びつきが強いのが特徴だ。その特徴を生かし、豆製品を得意とする同業他社と協業なども考えていきたい。
「いずれにしても、『やっぱり大黒屋食品じゃないといけんわ』とお客様に言っていただけるような珍味をつくり続けたいですね。それが私たちの使命であり、生き残るための方法だと思います」と片岡社長。その言葉には、確かな自信と覚悟がにじんでいた。
こだわり抜いて製造された美味しい珍味を、これからも届け続けてくれるであろう大黒屋食品。まずは、その代表的商品「せんじ肉」を味わってみてはいかがだろうか。購入は大黒屋食品のオンラインショップからも可能だ。
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